2027年1月の引き落とし分から、企業年金のない会社員のiDeCo掛金上限が月2.3万円から月6.2万円へ、約2.7倍に引き上げられるのですが、これ「節税できる金額が増える」という話で放置するのは損。
ただし、無条件に喜べない落とし穴もありますので、事実だけを整理してみましょう。
数字で見る改正内容
2026年12月1日施行、2027年1月26日引き落とし分からの適用となる法改正の変更点は大きく3つ。
①掛金上限の引き上げ(第2号被保険者=会社員・公務員)
企業年金なしの会社員は、月2.3万円から6.2万円(年間74.4万円)、企業年金ありの会社員・公務員は企業年金との合算上限が月5.5万円→6.2万円に拡大され、従来あったiDeCo単体の上限2万円という制限が撤廃されます。
自営業・フリーランスは国民年金基金との合算で月6.8万円から7.5万円(年間90万円)に引き上げ。
②加入可能年齢の拡大
これまで会社員・公務員は65歳未満まで、自営業者などは60歳未満までの加入だったのですが、改正後は老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していなければ、70歳未満まで積み立てを継続できるように。
③第3号被保険者(専業主婦・主夫等)は変更なし
第3号被保険者については2027年1月以降も拠出限度額の変更はなく、現行どおり月額23,000円が上限。
節税効果が具体的にどう増えるか
iDeCoの掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれ、所得税+住民税の合計税率が20%の会社員を例にとると:
- 改正前:月2.3万円×12×20%=年5.52万円の節税
- 改正後:月6.2万円×12×20%=年14.88万円の節税
差額は年約9万円。税率が高いほど効果は大きくなります。
月6.2万円を35年間積み立てた場合、元本2,604万円に対して運用益1,956万円が加わり、最終資産額は4,560万円に達するという試算もある(運用利回り等の前提による試算であり、保証値ではない)。
注意点:これは正直に
①退職所得控除の「二重取り」が難しくなった
改正により、退職金を先に受け取った後iDeCoの一時金を受け取る場合、それぞれで退職所得控除を満額適用するための空白期間が「5年間」から「10年間」に変更となります。
この改正は2026年1月1日以降に受け取る退職一時金から適用され、これが「iDeCo改悪」と言われる理由の核心。
退職金とiDeCoを一時金で受け取るプランを描いていた人は、受け取り方の戦略を見直す必要があります。
②60歳まで引き出せない
iDeCoは20歳〜64歳が加入対象なのですが、受け取り開始は60歳〜75歳で、急な資金需要には対応できない。
NISAと違い、資金が長期間拘束されるわけです。
③掛金を増やしても節税効果が薄れるケースがある
2025年度から基礎控除や給与所得控除の引き上げにより所得税額が下がる層もあるため、iDeCoの節税効果が相対的に薄れる場合があります。
やみくもに掛金を増やす前に、自分の税率を確認することが重要。
今すぐやるべき3つのアクション
1. 自分の「企業年金の有無」を確認する
勤務先に企業型DC(確定拠出年金)やDB(確定給付年金)があるかどうかで、改正後の上限額が大きく変わります。
わからない場合は勤務先の人事・労務担当に「iDeCoの掛金上限を確認したい」と問い合わせるのが確実。
2. 受け取り方の出口戦略を今から考える
特に50代以上は「退職金とiDeCoをどの順番でいつ受け取るか」が税負担に直結するので、FP(ファイナンシャルプランナー)への相談を検討する価値も。
3. 掛金変更の手続きタイミングを把握する
掛金変更の事前受付は、2026年9月1日〜11月18日を予定(りそな銀行の例)。
金融機関によってスケジュールが異なるため、加入先の証券会社・銀行の案内を2026年夏以降に確認すること。
iDeCo改正は「使いやすくなった」という側面と「受け取り時の税制が厳しくなった」という側面が同時に存在し、どちらか一方だけ見て判断するのは危険。
自分の職業・年収・企業年金の有無・退職金の見込み額を踏まえたうえで、掛金増額の判断をすること。



