カテゴリー: 資産形成(iDeCo・NISA)

  • NISAとiDeCoをどう使い分ける? 政策動向から考える、家計の資産配分アプローチ

    NISAとiDeCoをどう使い分ける? 政策動向から考える、家計の資産配分アプローチ

    新NISAのスタート以降、資産形成といえば「まずはNISA口座を開設して積立を始めること」が広く知られる選択肢となりました。

    手軽に始められ、必要に応じて売却でき、運用益が非課税となる柔軟性は、投資に対するハードルを大きく下げたと言えます。

    しかし最近では、政府の金融戦略や成長戦略の議論において、NISAの普及・利便性向上に加え、確定拠出年金(DCやiDeCo)の拡充や制度改革も重視する動きが目立ち始めています。

    この変化は、NISAによる資産形成の促進に加え、より長期的な老後資産形成を支えるDCやiDeCoの機能も強化しようとする動きとなっているるのですが、制度の優先順位をどう捉えるべきかという新たな課題が浮かび上がっています。

    「とりあえずNISA」の次にやってくる、確定拠出年金(iDeCo)重視の波

    新NISAの普及によって、多くの人が資産運用を選択肢のひとつとして取り入れる環境が広がっています。

    その一方で、NISAは必要に応じて売却できるため、老後資金として長期運用する場合には、途中で取り崩す可能性も考慮する必要があります。

    政府が成長戦略等において、DCやiDeCoの機能強化を進める背景には、老後に向けた資産形成を促進するという政策目的があり、拠出時に加入者本人の掛金が全額所得控除の対象となるiDeCoは、長期的な老後資産形成を支援する税制優遇を備えた仕組みといえます。

    政策においてDCやiDeCoの機能強化も進められていることは、「NISAさえやっていれば十分」と思うのではなく、自身のライフプランに合わせた制度の組み合わせを考える必要性を示しています。

    「引き出せない不便さ」が持つ、長期形成における逆説的な強み

    iDeCoをはじめとする確定拠出年金を利用する際の大きな注意点の一つは、原則60歳以降の受給年齢まで資金を引き出せないという拘束力にあり、途中で自由に使えないことは、不測の事態に備えたい現役世代にとって心理的なハードルとなりがち。

    しかし、この「自由度の低さ」は、老後資金の形成においては強制力という側面を持ち、NISAと異なり原則として60歳以降の受給年齢まで資産を引き出せないため、老後資金を途中の消費に回しにくくする効果があります。

    資産形成におけるリスクは、運用の変動リスクだけではありません。

    「途中で使ってしまうリスク」をどうコントロールするかも重要になり、流動性の高いNISAと、資金拘束のあるiDeCoという異なる性質を持つ制度をどう組み合わせるかが、資産形成を考えるうえでのポイントになります。

    資金を「柔軟性」と「拘束力」で資産配分

    では、現役世代は、NISAとiDeCo(DC)へどのように資金を配分すべきでしょうか?

    単に「どちらが得か」という損益計算だけで比較するのではなく、資金の「使用目的」と「必要となる時期」に応じた分け方が有効となります。

    • 柔軟性優先ゾーン(NISA等を検討)
      60歳以前に使う可能性があり、取り出しの自由度を確保したい資金。ただし、住宅購入、教育資金、予備費など使う時期や金額が決まっている資金については、元本割れの可能性も踏まえて預貯金を含めた方法を検討する
    • 拘束力優先ゾーン(iDeCo/DC活用)
      老後の生活費など、60歳以降まで手をつけないことを前提とし、所得控除の税制メリットも考慮して積み立てる資金

    手元の資金を一括りに「投資に回すお金」として扱うのではなく、資金の出口に合わせた制度選択を行うことが重要で、まずは生活防衛資金を確保し、中期的な使途については必要となる時期や価格変動リスクを踏まえ、NISA活用の可否を判断し、そのうえで、老後専用の資金としてiDeCoの拠出額を検討するという優先順位を設けることが、無理のない計画につながります。

    資産形成において、NISAに加え、iDeCoの活用も注目される背景には、制度の優劣ではなく、個人のライフステージや目的に応じた役割分担の必要性があります。

    重要なのは、話題の制度に飛びつくことではなく、自らの資産を「柔軟に使うお金」と「老後まで守り育てるお金」に切り分け、それぞれに適した制度を配置すること。

    政策の方向性が示す変化をきっかけに、ご自身の資産配分が目的に合致しているかを見直すことが、持続可能なマネープランの構築へとつながっていきます。

  • 新NISA、証券会社は変更すべき?比較基準と判断の仕方

    新NISA、証券会社は変更すべき?比較基準と判断の仕方

    2026年も8月に入り、放置していた証券口座の整理をそろそろ片付けたいと考えている人もいるのでは?

    新NISAはすでに始めているものの、いま使っている証券会社をこのまま使い続けていいのか?それとも他社に変更したほうが得なのか?判断がつかないまま来ている人も多いことでしょう。

    特に旧NISAの口座を別に持っている場合、その資産をどう扱うかも合わせて考える必要が出てきます。

    今回、証券会社を変更すべきかどうかの判断基準、SBI証券と楽天証券を中心とした比較、旧NISA資産の扱い、そして実際に金融機関を変更する際の手順を改めて考えてみましょう。

    証券会社の優劣は一律には決まりませんし、自分が普段使っているクレジットカードやポイント経済圏との相性で、最適な選択肢が変わってくるものなのですよ。

    証券会社を変更すべきか?その判断基準

    証券会社を変更する価値があるかどうかは、まず「いま何を使っているか」で決まり、クレジットカード積立をまだ設定していない、あるいは還元率の低いカードで積立をしている場合は、変更によって得られるメリットが比較的大きくなります。

    逆に、すでにSBI証券や楽天証券のような主要ネット証券を使っていて、なおかつ自分がよく使うポイント経済圏とも一致している場合は、わざわざ変更する必要性は薄いといってもいいでしょう。

    判断を難しくしているのは、変更そのものに手間がかかる点で、後述するが、NISAの金融機関変更は年に1回しかできず、手続きにも1〜2ヶ月ほどかかります。

    還元率の差が年間で数千円程度にとどまるなら、その手間に見合わないこともありますし、まずは自分の積立額とカード利用状況を照らし合わせ、変更によってどの程度の差が生まれるのかを確認してから判断するようにしましょう。

    主要証券会社を同じ基準で比較

    証券会社選びで比較すべき軸は、クレジットカード積立の還元率と、取扱銘柄の充実度の2つに絞られ、使い勝手やアプリの操作感も気になるところではあるとはいえ、これは個人の慣れによる部分が大きく、客観的な優劣をつけられる性質のものでもなく、実際に無料で口座を開設し、積立設定の画面を見比べてみるのも一つの方法。

    クレジットカード積立の還元率

    還元率の仕組みは、SBI証券と楽天証券でかなり性格が異なる。

    楽天証券の場合、還元率は年間のカード利用額に関係なく固定されていて、代行手数料が年率0.4%以上のファンドを積み立てる場合、楽天カード(一般)・楽天ゴールドカード・楽天プレミアムカードはいずれも1.0%、楽天ブラックカードは2.0%の還元となります。

    一方、代行手数料が0.4%未満の低コストなインデックスファンドを積み立てる場合、一般カードが0.5%、ゴールドカードが0.75%、プレミアムカードが1.0%、ブラックカードは変わらず2.0%という段階になるので、低コストファンドを積み立てるなら、プレミアムカード以上でないと1%還元には届かない仕組みになっています。

    年間の利用額を気にしなくていい分、還元率の見通しは立てやすい。

    SBI証券は、これとは対照的に条件が積み重なる仕組みになっていて、三井住友カードによる積立では、対象カードの年間利用額に応じて基本の還元率が変わり、公式サイトでは最大4%までポイントが付与され、加えて、Oliveの資産運用サービスに申し込み、一定の条件を満たすと最大2%が上乗せされる仕組みもあります、

    さらに2026年4月からは、Oliveアカウントの円普通預金残高に応じて還元率が最大0.5%上乗せされる「Olive限定上乗せプラン」も始まっています。

    しかし、このOlive上乗せプランと先の資産運用特典は同時には適用されないので、両方をそのまま足し合わせた数字がそのまま得られるわけではないことには注意。

    ネット上には「還元率4.5%」「最大6%」といった数字も出回っているが、これらはいずれも特定の条件をすべて満たした場合の上限であり、通常のカード利用だけで到達する水準ではない点は理解しておきましょう。

    このように、楽天証券は「シンプルだが上限が低め」、SBI証券は「条件次第で上限は高いが仕組みが複雑」という違いがあり、カードの年間利用額を管理する手間をかけられるかどうかも、選択の分かれ目になります。

    取扱銘柄・投信ラインアップ

    つみたて投資枠だけで比較すると、両社の取扱銘柄数に大きな差はなく、2026年7月時点の情報では、SBI証券が294本、楽天証券が290本とされ、ほぼ横並びと見ていい。

    低コストのインデックスファンドを中心に積み立てるなら、この面で証券会社を選ぶ理由はなく、差が出るのは、成長投資枠や個別株の取引まで含めた場合。

    SBI証券は投資信託・日本株・単元未満株・外国株のいずれについても、成長投資枠での取扱商品数が楽天証券を上回っていて、特に単元未満株については、SBI証券が楽天証券の2倍以上の銘柄を扱っていて、日本株の対応取引所についても、SBI証券が東京・名古屋・福岡・札幌の4市場に対応しているのに対し、楽天証券は東京と名古屋の2市場にとどまっています。

    つみたて投資枠中心で運用するつもりならこの差はほとんど影響しないが、成長投資枠で個別株や外国株にも手を広げたい場合、SBI証券のほうが選択肢が広くなります。

    自分の経済圏に合う証券会社の選び方

    還元率と取扱銘柄だけを見ると差が小さく感じられるかもしれませんが、実際の得のしやすさは、自分が普段どのポイント経済圏を使っているかによって大きく変わってきます。

    楽天市場や楽天カードを日常的に使っている人であれば、楽天証券を選ぶ理由は、単純にクレカ積立の還元率だけにとどまらず、楽天ポイントコースとマネーブリッジの設定を組み合わせることで、楽天市場での買い物のポイント還元率を引き上げるSPU(スーパーポイントアッププログラム)の対象にもなります。

    積立自体の還元だけでなく、日常の買い物全体にメリットが波及する点が楽天経済圏のユーザーにとっての強みといってもいいでしょう。

    一方、Vポイントやコンビニ・飲食店での還元を重視する人には、SBI証券と三井住友カードの組み合わせが選択肢となり、Oliveアカウントと組み合わせることで、対象のコンビニや飲食店での支払いに還元率が上乗せされる仕組みが用意されていて、投資と日常の決済をひとつのカードにまとめたい人には相性がいい。

    どちらの経済圏にも強くこだわりがなく、シンプルに投資だけを考えたいという人は、還元率の差より、取扱銘柄の広さや手数料体系といった投資そのものの条件で選ぶほうが、長期的には納得感を持って続けやすくなるはず。

    旧NISA口座の資産は売却すべきか?そのまま持つべきか?

    証券会社の変更を考えるとき、もう一つ避けて通れないのが旧NISAで保有している資産の扱い。

    ここでまず押さえておきたいのは、旧NISAの資産を新NISAへそのまま移すことはできないという点で、楽天証券の公式サイトでも説明されているとおり、旧NISAから新NISAへのロールオーバー、つまり非課税のまま資産を移し替える仕組みは制度上廃止されています。

    旧NISAの非課税期間が終了すると、保有している商品は自動的に課税口座へ移され、移された後にその商品を売却して利益が出た場合、譲渡益や配当には20.315%の税金がかかります。

    これは所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%を合わせた税率で、国税庁のタックスアンサーにも示されている一般的な上場株式等の税率。

    では、非課税期間が終わる前にどうするべきか?

    選択肢は大きく3つあり、一つは、そのまま保有を続け、非課税期間終了後に課税口座へ移った状態で持ち続ける方法。

    二つ目は、非課税期間内に売却してしまう方法。

    三つ目は、一度売却して現金化し、その資金で新NISA側に同じ商品を買い直す方法。

    三つ目の方法を使えば、同じ銘柄を新NISAの非課税枠の中で持ち続けることができるのですが、売却と買付のタイミングによっては市場価格の変動で損失が生じる可能性もあり、含み益が大きい銘柄ほど、いったん利益を確定させてから買い直すという判断が合理的になりやすい一方、含み損を抱えている銘柄では急いで動く必要はない。

    どちらが正解というより、保有している銘柄の含み損益と、今後も値上がりを期待するかどうかによって判断が変わる部分が大きく、金額が大きい場合や、確定申告への影響が気になる場合は、税理士など専門家に相談したうえで決めるのも一つの方法となります。

    金融機関を変更する具体的な手順と注意点

    比較検討した結果、証券会社を変更すると決めた場合、次に押さえておくべきはNISA口座の金融機関変更のルール。

    まず大前提として、NISAで利用する金融機関は年に1回しか変更できないうえ、その年にすでにNISA口座で買付をしている場合、その年のうちに金融機関を変更することはできず、変更は翌年からとなります。

    受付期間の目安は、変更したい年の前年10月1日から、変更する年の9月末前後までとされているのですが、締切日は金融機関によって前後しており、9月末ちょうどではなく9月上旬や中旬で受付を締め切る金融機関もあるため、変更を考えている場合、変更先の証券会社に具体的な締切日を早めに確認しておきましょう。

    手続きの流れとしては、まず現在NISA口座を持っている金融機関で変更の手続きを行い、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を受け取るのですが、この書類の発行には1〜2週間程度かかることが多いことを覚えておきましょう。

    書類を受け取ったら、変更先の金融機関でNISA口座の開設を申し込み、税務署の審査を経て手続きが完了するのですが、全体としては1〜2ヶ月ほど時間がかかることを見ておくのが無難。

    注意しておきたいのは、変更前の金融機関で保有していた資産は、変更後の金融機関のNISA口座へそのまま移すことができないという点で、制度上、NISA口座間での商品の移管は認められていないため、変更前に買い付けた商品は、それまで使っていた金融機関で非課税のまま保有を続けることになります。

    つまり、証券会社を変更しても、それまでの資産と新しい資産は別々の口座で管理していく形になるので、この点を踏まえたうえで、変更するタイミングを年末や年始などのきりのいい時期に合わせて計画しておくと、手続きの管理がしやすくなります。


    証券会社を変更すべきかどうかは、還元率の数字だけで決めるものではなく、自分が普段使っているカードやポイント経済圏との相性、そして成長投資枠でどこまで投資対象を広げたいかによって、最適な選択肢は変わってきます。

    楽天証券は還元率の仕組みがシンプルで経済圏との相性を活かしやすく、SBI証券は条件次第で還元率の上限が高く、取扱商品の幅も広い。

    旧NISAの資産は新NISAへ直接移すことができないため、非課税期間が終了する前に、保有を続けるか、売却するか、買い直すかを別途判断しておく必要があり、証券会社の変更を決めたら、年1回しかできない金融機関変更の受付期間を確認し、廃止通知書の受け取りから新口座開設までの流れを逆算して、余裕を持ったスケジュールで進めることを考えましょう。

  • iDeCoは70歳まで延長、でも誰でも得とは限らない理由

    iDeCoは70歳まで延長、でも誰でも得とは限らない理由

    「70歳まで加入可能」という分かりやすい利点の裏に、年金の受給時期や所得によって効果が変わる条件がある。


    iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで広がる。

    老後資金を準備できる期間が長くなるため、誰にとっても有利な変更に見えるようですが、実際は65歳を過ぎても掛金を出し続けるには条件があります。

    所得控除の恩恵も、仕事による所得や納めている税金の額で変わってきますs、「長く積み立てられる」と「長く積み立てたほうがよい」は、同じ意味ではないことを理解しておきましょう。

    2026年12月から加入対象を拡大

    改正は2026年12月1日に施行される予定になっており、一定の条件を満たせば、国民年金の被保険者ではない60歳以上70歳未満の人もiDeCoへ加入し、掛金を拠出できるようになります。

    対象となるのは、iDeCoの加入者や運用指図者、企業年金からiDeCoへ資産を移す人などで、老齢基礎年金とiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、企業型確定拠出年金でマッチング拠出をしていないことも条件となります。

    制度開始から3年間は経過措置が設けられ、通常の対象要件に当てはまらない60歳以上70歳未満の人にも加入の道が開かれるのですが、老齢基礎年金などをすでに受給している場合は対象外となってしまいます。

    65歳以降は「年金を受け取らない」が条件になる

    改正の分かりにくい部分は、65歳以降も掛金を出すなら、原則65歳から受け取れる老齢基礎年金を「受給していない必要」があることで、65歳になったら年金を受け取りながら、同時にiDeCoへ積み立てるという単純な使い方はできないようになっています。

    つまりは、老齢基礎年金を繰り下げ、iDeCoの老齢給付金も受け取らず、資産形成を続ける設計になるわけです。

    一定の収入があり、当面は年金を受け取らなくても生活できる人には選択肢のひとつとなるのですが、年金を生活費へ回したい人にとっては、加入可能年齢が延びてもこの制度は利用しにくいものと言えるでしょう。

    所得控除も収入があってこそ

    iDeCoでは、拠出した掛金が全額所得控除の対象になり、2026年12月からは、企業年金のない会社員などの拠出上限も、月額2万3000円から6万2000円へ引き上げられます。

    ただし、所得控除によって軽減される税額は、その人の課税所得によって異なっており、退職後に所得が少なく、所得税や住民税の負担も小さい場合、現役時代と同じ節税効果が得られるとは限りません。

    また、iDeCoの資産は原則として受給開始まで引き出すことはできませんから、住宅修繕や医療、家族支援など、まとまった支出が発生した場合、拠出額を増やすほど、自由に使える預貯金は減ることに。

    今回の改正で実用性が高まりやすいのは、まず60代前半で、働き続けながら所得控除を使い、積立期間を延ばしやすくはなります。

  • 【2027年1月から大改正】iDeCoの掛金上限が最大2.7倍に。会社員が今すぐ確認すべき3つのこと

    【2027年1月から大改正】iDeCoの掛金上限が最大2.7倍に。会社員が今すぐ確認すべき3つのこと

    2027年1月の引き落とし分から、企業年金のない会社員のiDeCo掛金上限が月2.3万円から月6.2万円へ、約2.7倍に引き上げられるのですが、これ「節税できる金額が増える」という話で放置するのは損。

    ただし、無条件に喜べない落とし穴もありますので、事実だけを整理してみましょう。

    数字で見る改正内容

    2026年12月1日施行、2027年1月26日引き落とし分からの適用となる法改正の変更点は大きく3つ。

    ①掛金上限の引き上げ(第2号被保険者=会社員・公務員)

    企業年金なしの会社員は、月2.3万円から6.2万円(年間74.4万円)、企業年金ありの会社員・公務員は企業年金との合算上限が月5.5万円→6.2万円に拡大され、従来あったiDeCo単体の上限2万円という制限が撤廃されます。

    自営業・フリーランスは国民年金基金との合算で月6.8万円から7.5万円(年間90万円)に引き上げ。

    ②加入可能年齢の拡大

    これまで会社員・公務員は65歳未満まで、自営業者などは60歳未満までの加入だったのですが、改正後は老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していなければ、70歳未満まで積み立てを継続できるように。

    ③第3号被保険者(専業主婦・主夫等)は変更なし

    第3号被保険者については2027年1月以降も拠出限度額の変更はなく、現行どおり月額23,000円が上限。


    節税効果が具体的にどう増えるか

    iDeCoの掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれ、所得税+住民税の合計税率が20%の会社員を例にとると:

    • 改正前:月2.3万円×12×20%=年5.52万円の節税
    • 改正後:月6.2万円×12×20%=年14.88万円の節税

    差額は年約9万円。税率が高いほど効果は大きくなります。

    月6.2万円を35年間積み立てた場合、元本2,604万円に対して運用益1,956万円が加わり、最終資産額は4,560万円に達するという試算もある(運用利回り等の前提による試算であり、保証値ではない)。


    注意点:これは正直に

    ①退職所得控除の「二重取り」が難しくなった

    改正により、退職金を先に受け取った後iDeCoの一時金を受け取る場合、それぞれで退職所得控除を満額適用するための空白期間が「5年間」から「10年間」に変更となります。

    この改正は2026年1月1日以降に受け取る退職一時金から適用され、これが「iDeCo改悪」と言われる理由の核心。

    退職金とiDeCoを一時金で受け取るプランを描いていた人は、受け取り方の戦略を見直す必要があります。

    ②60歳まで引き出せない

    iDeCoは20歳〜64歳が加入対象なのですが、受け取り開始は60歳〜75歳で、急な資金需要には対応できない。

    NISAと違い、資金が長期間拘束されるわけです。

    ③掛金を増やしても節税効果が薄れるケースがある

    2025年度から基礎控除や給与所得控除の引き上げにより所得税額が下がる層もあるため、iDeCoの節税効果が相対的に薄れる場合があります。

    やみくもに掛金を増やす前に、自分の税率を確認することが重要。 


    今すぐやるべき3つのアクション

    1. 自分の「企業年金の有無」を確認する

    勤務先に企業型DC(確定拠出年金)やDB(確定給付年金)があるかどうかで、改正後の上限額が大きく変わります。

    わからない場合は勤務先の人事・労務担当に「iDeCoの掛金上限を確認したい」と問い合わせるのが確実。

    2. 受け取り方の出口戦略を今から考える

    特に50代以上は「退職金とiDeCoをどの順番でいつ受け取るか」が税負担に直結するので、FP(ファイナンシャルプランナー)への相談を検討する価値も。

    3. 掛金変更の手続きタイミングを把握する

    掛金変更の事前受付は、2026年9月1日〜11月18日を予定(りそな銀行の例)。

    金融機関によってスケジュールが異なるため、加入先の証券会社・銀行の案内を2026年夏以降に確認すること。


    iDeCo改正は「使いやすくなった」という側面と「受け取り時の税制が厳しくなった」という側面が同時に存在し、どちらか一方だけ見て判断するのは危険。

    自分の職業・年収・企業年金の有無・退職金の見込み額を踏まえたうえで、掛金増額の判断をすること。

  • iDeCoの管理機関の選択は重要。

    iDeCoの管理機関の選択は重要。

    iDeCoでは、運営管理機関の選択がとても重要です。

    というのも iDeCoの口座は、銀行口座のように複数の口座を作れるわけではなく、口座を開設できるのは一人につき一つだけとなっています。

    運営管理機関には「運用関連運営管理機関」と「記録関連運営管理機関」があり、iDeCo専用の口座は、「運用関連運営管理機関」として登録されているところで開設することになり、2022年7月時点で221社あり、この中からiDeCoを運用する機関を選ぶことになります。

    商品やコスト、サービスなど様々ですから慎重に選ぶようにしましょう。

    後から運用機関を変更することができるとはいえ、この変更には手間とコストがかかるので、まず最初にしっかりと品定めしておくべきです。

    運用機関の選び方

    どんな商品があって、どんなサービスがあるのかはとても大切なのですが、まず1番に気にしておきたいのが、口座管理手数料

    まず、iDeCoに加入すると様々な手数料がかかり、口座管理手数料は、 iDeCoの資産受け取りが完了するまで毎月支払わなければならないものとなります。

    そしてこの口座管理手数料は、1番安いところと1番高いところでは、年間約6千円ほどの差がありますので、十分確認しておきたいところです。

    この口座管理手数料は、毎月の掛金の中から自動で差し引かれるので、別途支払うという感覚にはなりませんが、手数料が高い場合、実質の掛金が少なくなるので運用面に影響が出てしまうことになります。

    とはいえ、口座管理手数料が安ければいいというものでもなく、iDeCoでは口座を開いた運用機関が提示している商品しか運用できませんから、その運用機関がどれくらいの商品を持っているのかも調べておきたいところ。

    長い運用の中では、リスクの大きさも変わってきますので、商品の入れ替えを考えることも出てくるでしょうから、商品の保有数が多ければ多いほど、商品の選択肢が広がります。

    「国内株式型」「国内債券型」「外国株式型」「外国債券型」を対象とした低コストの商品があるのかどうかも確認しておきましょう。

  • 個人型確定拠出年金iDeCo

    個人型確定拠出年金iDeCo

    税制優遇を活用した自分で作れる年金「iDeCo」。

    この制度自体は2001年10月から始まったのですが、「iDeCo」という名称は2016年9月につけられたもので、2017年1月から加入対象者がほぼ全国民に拡大されたことによって加入者が急増し、2020年6月時点では約163万人、2022年3月時点で238.8万人となっています。

    現在も会社員や公務員のiDeCo利用が広がっており、公務員の加入率は1割を超え、これまで利用が低調だった自営業者等や専業主婦等についても、2020年後半以降は新規加入者数の増加ペースが加速しているようです。

    そもそもiDeCoができたのは、平成の時代に入りバブルが崩壊、日本経済が大きな転換期を迎え、雇用は流動化、終身雇用が崩れ、フリーランスという働き方が認知され始めました。

    これまで自営業者などには国民年金だけしかなく、公務員や会社員などのような厚生年金、企業年金のようなものはなく、手薄な年金制度を補うための私的年金制度として国民年金基金が誕生し、自営業者やフリーランスが老後の生活を公的年金だけに頼ることなく、自分自身で掛金を出し、その運用までも決定し、資産を増やしていく制度が生まれました。

    受け取り方法

    iDeCoに加入できるのは、これまでは20歳以上60歳未満のすべての人が対象だったのですが、2022年5月の改正により、任意加入保険者も含め、国民年金被保険者であれば65歳まで加入することができるようになっています。

    掛金は拠出限度額内で、月々5000円から1000円単位で自由に設定することができ、積み立ては1年単位でも積み立てることができます。

    その積み立てた年金資金は、原則として60歳から老齢給付金として受け取ることができ、その受け取り方法には3つの選択肢があります。

    1つは、原則60歳になったら75歳になるまでの間に、一時金として受け取る方法で、2つ目はこれらを分割して受け取る方法。

    分割して受け取る場合には、5年以上20年以下の有期年金として受け取ることになります。

    そして、3つめは先ほどの2つを組み合わせたもので、原則60歳になったら、一部の年金資産をまとめて一時金として受け取り、残りの年金資産を分割して年金として受け取ることになります。

    一時金

    一時金の場合、iDeCoの受取金は税制上、退職所得に該当し、退職所得は他の所得と分離して所得税を計算する、いわゆる分離課税の方式となっており、受け取った金額の総額ではなく「2分の1課税」「退職所得控除」により計算した金額に税金がかかるので支払う税金の額は抑えることができます。

    有期年金

    公的年金と同じ扱いの雑所得となるので、公的年金等控除が利用でき、受取金額からその控除額を差し引いた金額が課税対象となります。

  • IDeCoに加入できる年齢の拡大

    IDeCoに加入できる年齢の拡大

    iDeCoが2021年10月に20周年を迎えたのですが、その後いくつかの改正が立て続けに行われました。

    1番の話題となったのは「65歳までiDeCo加入(積立)可能」となる5月の改正、そして10月にやってくる「企業型DCとiDeCoの同時加入可能」改正。

    そもそもiDeCo(個人型確定拠出年金)は、仕事バリバリの現役時代に各個人が毎月一定額を積み立てていき、自らその運用先を選ぶことで、将来、相応の年金を受け取れるという制度で、日本の公的年金が、全員加入する国民年金と、企業に勤務するサラリーマンが加入する厚生年金の2階建てとなっていたところ、このiDeCoの登場によって、3階部分が建てられたというもの。

    これまでのiDeCoでは、年金(給付金)の受け取りは、60歳から70歳までの10年間となっていたのですが、2022年4月から60歳から75歳までと5年延長され15年間となりました。

    こちらも改正のひとつでもあるのですが、一番注目されている5月の改正、 原則65歳になるまで加入できるようになるということ。

    これまでの制度では、60歳未満だけがiDeCoへの加入できたのですが、2022年5月の改正後、原則65歳未満の国民年金被保険者であれば、加入が可能になります。

    2022年5月施行
    2022年5月施行

    これにより、60歳以上の会社員や公務員、国民年金に任意加入者として加入している人などが、65歳まで継続してiDeCoでの積み立てが可能で、当然のことながら所得控除などの税制メリットも受けられるので、60歳以降も働いて収入を得るかたなどには朗報と言えます。

    これまで国民年金は、原則として20~60歳までの40年(480月)加入し、受け取れる年金額は加入期間に応じて決まっており、そのため、未加入期間があると年金額が少なくなっていました。

    そういった人が、年金額を増やすために加入期間を延ばす制度が任意加入で、保険料を納めて国民年金の被保険者になれば、年金額も増え、さらに60歳以降もiDeCoに加入できます。

    このiDeCoの改正は、高齢期に働く人が増えたことも背景になっていて、税優遇のあるiDeCoのメリットを最大限活用し、100年生き抜くための老後生活資金づくりも検討してみる価値はあります。