年金通

知らないまま損する人をゼロにする

公的年金、運用益41兆円。歴代2位でも「株高・円安頼み」の不安

2025年度の運用状況

執筆者:

カテゴリ:

シェアする

公的年金を運用するGPIFが、2025年度の運用成績を公表しました。

運用収益は41兆3995億円と、過去2番目の規模となり、国内外の歴史的な株高と円安が追い風となり、6年連続の黒字となりました。

一方で、金利上昇の影響を受けた国内債券は赤字で、長期的な累積収益は約197兆円と大きく積み上がっていますが、その多くを市場環境に左右される資産が支えています。

年金運用益は41兆円超 歴代2位の「株高・円安バブル」

公的年金を運用するGPIFは、2025年度の運用収益が41兆3995億円だったと発表し、収益率は16.47%。前年度の45兆4153億円には及ばないものの、歴代2位の規模で、6年連続の黒字となっています。

年度末時点の運用資産額は293兆6437億円まで膨らみ、その背景にあるのは「歴史的な株高」と「円安」。

国内外で株価が大きく上昇し、とくに半導体や人工知能(AI)関連銘柄が市場全体を押し上げ、円安が進んだことで、外国資産を円に換算したときの評価額が一段と増えた形です。

数字だけを見ると「年金は意外と大丈夫そう」と感じるかもしれませんが、その多くが株式相場や為替の追い風に支えられた収益であることが、今回の発表のポイントとなります。

どこで稼いでどこで損をしたか資産別の内訳

今回の好成績を資産別で見ると、どこで利益が出ているのかがはっきり見えてきます。

国内株式は20兆4556億円、外国株式は16兆6240億円の黒字、さらに外国債券も8兆0406億円の黒字となっており、半導体・AI関連分野を中心とした株価の大幅上昇に加え、円安によって外国株式・外国債券の円換算額が増えたことが、収益を押し上げています。

その一方で、国内債券は3兆7207億円の赤字となりました。

日銀が利上げに動いたことで国債利回りが上昇し、その結果として既に保有している債券の価格が下落したためで、同じ「年金の運用益41兆円」という一つの数字の裏側で、株式や外国資産が大きく利益を出す一方、国内債券では損失が出ているという、資産ごとの明暗がくっきりと分かれています。

6年連続黒字と累積約197兆円 それでも残る「将来不安」

GPIFが運用を始めた2001年度からの累積収益額は、今回で196兆9306億円に達し、長期的に見ると、大きな黒字を積み上げてきたことは事実です。

単年度ベースでも6年連続で黒字が続いており、「年金の運用はちゃんと増えているのか」という疑問に対しては、数字のうえではプラスが続いていると言えます。

ただし、今回の好成績は、歴史的な株高と円安という、現在の市場環境に強く依存している側面があり、今後「給付水準がどう変わるか」「将来の支給開始年齢」といった制度面には、どう反映されているのかは疑問。

つまり、今回の数字だけで「老後はもう安心」と結論づけることも、「やはり不安だ」と決めつけることもできない状態で、重要なのは、年金財政を支える一つの要素として、運用が長期的には黒字を積み上げているという事実を押さえつつ、その収益が相場次第で大きく揺れ動く構造にも目を向けること。

今回の発表は、私たちの生活に直接すぐ何かが変わるという内容ではありません。

年金額が増える、支給開始年齢が変わるといった具体的な変更は示されておらず、数字と要因だけです。

生活者として意識しておきたいポイントは、公的年金の一部は、株式や為替といった市場の動きに大きく影響を受ける形で運用されているという現実と、長期的には約197兆円の累積収益を上げている一方で、今回のように国内債券が金利上昇で赤字になるなど、資産ごとにプラスとマイナスが常に動いているということ。

ニュースを通じて「年金の運用は相場とセットで考えるものだ」という感覚を持っておくと、今後、制度改正や市場の変動に関する報道を見たときにも、自分ごととして判断しやすくなるでしょう。

今回明らかになったのは、「公的年金の運用は、株高と円安の追い風が吹けば大きく増え、金利上昇局面では一部資産で損失も出る」という当たり前の構造が、はっきり数字に表れたということ。

41兆円超の運用益や累積約197兆円という規模感は、年金財政を支える一つの土台になっていますが、それだけで将来の安心が保証されるわけでもありません。

ニュースをきっかけに、自分の老後資金を「公的年金だけに頼らず、どう組み合わせていくか」を考えるための材料として、今回の数字を位置づけておくことが大切です。