iDeCoが70歳まで使える時代へ 「70歳まで積み立てるべき」ではない理由

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老後のお金を準備する期間を「60歳まで」で区切る考え方が、少しずつ変わってきています。

2026年12月1日から、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢が引き上げられます。

60歳以上70歳未満についても、一定の条件を満たせばiDeCoへの加入・継続拠出が可能になり、厚生労働省は、公的年金への上乗せとして私的年金に加入してきた人が、60歳から70歳にかけても老後の資産形成を続けられるようにすることを改正の目的としています。

ただ、この変更を「iDeCoを70歳まで積み立てられるようになった」とだけで理解するのではなく、重要なのは、70歳まで積み立てることが推奨されたわけではなく、老後資金を準備する期間の選択肢が広がったとみた方が良さそうです。

60歳を過ぎた後のiDeCoの選択肢が広がる

これまでのiDeCoも、すべての人が60歳で加入資格を失う制度だったわけではなく、2022年5月からは、会社員・公務員などの国民年金第2号被保険者について、60歳以上65歳未満でも加入できるようになっていました。

また、国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の人も対象となり、公的年金の加入期間が120月に満たないなどのケースでは、65歳以上でも加入できる場合があります。

今回の改正では、そこからさらに対象が広がり、2026年12月1日からは、60歳以上70歳未満で、現行制度では加入できない人のうち、iDeCo加入者、運用指図者、企業年金からiDeCoへ資産を移換する人など、一定の条件を満たす人が加入・継続拠出できるようになります。

老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないことなども条件となり、さらに、施行から3年間は経過措置があり、上記の条件に該当しない60歳以上70歳未満の人も加入できるようになっています。

つまり今回の変更は、「60歳でiDeCoが終わる」という単純な制度から、「60歳を過ぎた後も、働き方やこれまでの加入状況に応じて資産形成を続けやすくする」方向への見直されたということ。

なぜ「70歳未満」まで広げるのか

ここで考えたいのが、老後資金を準備する期間を年齢だけで決めてよいのかということで、60歳で仕事を辞める人と、60代後半まで働く人では、お金の流れが異なります。

働いて収入を得る期間が長ければ、資産を取り崩し始める時期も変わるでしょうし、60歳以降も働くつもりがあっても、その期間の収入や生活費がどうなるかは人によって異なっています。

今回の制度改正は、こうした違いを前提に、60歳を過ぎても老後の資産形成を続けられるように枠を広げるもので、厚生労働省も、今回の私的年金制度の見直しについて、働き方やライフスタイルの多様化、高齢期の就労拡大、老後の多様なニーズへの対応を背景として挙げています。

これにより、老後資金の準備を特定の年齢までに終わらせるという一律の発想が、現実の働き方とは合いにくくなっていることがわかりますね。

ただし「70歳まで積み立てるほど得」とは限らない

ここは制度変更を考えるうえで重要なことは、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで広がったからといって、全員が70歳まで掛金を払い続ける必要があるわけではないですし、すでに老後に必要な資金を十分確保できている人なら、追加で資産形成を続ける必要性は低いでしょう。

一方、60代になっても働いていて、老後資金の準備を続けたい人にとっては、今回の変更によって選択肢が増えるわけで、年齢だけを見て「60歳だから終了」「70歳まで続ける」という判断をするのではなく、働いている期間、収入、生活費、すでに持っている資産を合わせて考える必要があります。

今回の改正は、その判断をするための時間を延ばした制度変更と考えたほうが分かりやすいかもしれません。

「積み立てられる額」も変わる

2026年12月1日からは、加入可能年齢だけでなく、iDeCoなどの拠出限度額も引き上げられ、国民年金第2号被保険者のiDeCoについては、企業年金等との共通の拠出限度額が月額6.2万円に。

ただし、企業年金等に加入している場合、その掛金相当額や企業型DCの掛金額などを差し引いて計算するため、誰もがiDeCoだけで月6.2万円を拠出できるわけではありません。

国民年金第1号被保険者については、iDeCoと国民年金基金を合わせた拠出限度額が月額7.5万円に引き上げられるのですが「上限まで使ったほうがいい」という話でもなく、制度側が用意する枠が広がったことで、老後資金をどの程度、どの期間で準備するかを個人ごとに考えやすくなったと見るほうが実態に近い。

iDeCoは、公的年金に上乗せして老後の資産形成を行う私的年金であり、今回の改正では、加入可能年齢と拠出限度額の両方が見直されました。

「何歳まで働くか」で老後資金の作り方も変わる

今回のiDeCo改正から考えたいのは、老後資金を作る方法そのものより、いつまで働き、いつから資産を使うのかという順番で、60歳で完全に仕事を終えるなら、そこから資産を取り崩していくことになりますし、65歳、あるいはそれ以降も働くなら、資産を取り崩す時期を後ろにずらすことができるでしょうs、その場合、60代の収入を得ながら私的年金による資産形成を続けるという選択肢が意味を持ってきます。

もちろん、実際にどの選択が適しているかは、年金額や収入、資産、生活費などによって変わってきますから、「70歳未満まで」という数字だけを見て判断するのは適切ではありません。

これまで老後資金について考えるとき「60歳までにいくら貯めるか」という発想が中心になっていたのですが、これからは「何歳まで働くのか」「いつから資産を使うのか」「その間にどこまで資産形成を続けるのか」という時間軸まで含めて考える必要があります。

iDeCoの「70歳未満」という変更は、老後資金のゴールが70歳になったという話ではなく、60歳という年齢だけで資産形成の終点を決める必要がなくなってきたことに意味があります。