iDeCo一時金は「20年・800万円」で終わらない。2026年12月改正の前に確認したい退職所得控除と退職金の関係

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iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を出した年に所得控除を受けられ、60歳以降に一時金で受け取るときも退職所得として優遇されます。

ただし、受け取り時にどれだけ税金がかかるかは、積み立てた年数と会社から受け取る退職金の有無で大きく変わり、さらに2026年12月には掛金上限と加入年齢が見直され、これまでの「月2万円を20年」という定番の試算が、そのまま使えない人も出てきます。

退職所得控除の基本

一時金で受け取ったiDeCoは、退職所得として扱われるのですが、計算の流れは次のとおりです。

  • 課税退職所得=(受取額−退職所得控除)×1/2
  • 退職所得控除は、拠出期間(年未満の端数は切り上げ)で決まります。
拠出期間退職所得控除
20年以下40万円×年数(最低80万円)
20年超800万円+70万円×(年数−20)

拠出20年なら800万円、30年なら1,500万円が控除されます。

月2万円×20年の試算

毎月2万円を20年積み立てると、元本は480万円で、年5%で運用できたと仮定した試算では、20年後の資産は約812万円、運用益は約332万円になります。

控除額800万円とほぼ同じ金額となり、課税退職所得は(812−800)×1/2=約6万円で、税額はごくわずかとなるのですが、次の点については注意が必要です。

  • 年5%は計算上の前提で、将来の運用結果を示すものではありません。
  • 積立の方法(毎月か年1回か)や手数料の扱いで、結果は数十万円単位で変わります。
  • 「控除枠とぴったり重なる」のは、あくまで仮定がそろったときの偶然に近い数字です。

拠出中の節税は税率で大きく変わる

掛金は全額が所得控除になり、年間24万円(月2万円)の場合の軽減額は、所得税率によって次のように変わります(住民税率は10%として)

所得税率年間の軽減額20年間の合計
10%4.8万円96万円
20%7.2万円144万円

口座の手数料(年2,000円強が目安)を差し引いても、10%の場合で約90万円が残り、多くの人にとっては、受け取り時の控除よりも、拠出中の所得控除のほうが節税額としては大きくなります。

会社の退職金があると、控除を取り合う

先ほどの計算がそのまま当てはまりやすいのは、勤務先に退職給付制度や企業年金がなく、退職所得控除をiDeCoだけに使える人。

会社の退職金も受け取る場合、iDeCoの拠出期間と勤続期間は重なり、重なった期間は、控除の計算で二重には数えられません。

次は簡略化した例。

条件内容
勤続年数38年(退職所得控除2,060万円)
会社の退職金1,500万円
iDeCo20年拠出で812万円
  • 同じ年に受け取る場合:合計2,312万円に対して控除は2,060万円のみです。課税退職所得は(2,312−2,060)×1/2=126万円になります。
  • 十分な間隔を空けて受け取る場合:会社分は控除の範囲に収まり、iDeCo分の課税退職所得は約6万円です。

受け取り時期をずらせるかどうかで、課税対象が約120万円変わる場合があり、同じ812万円でも、税額は同じにはなりません。

2026年1月から変わった受取順序のルール

令和7年度税制改正で、退職金とiDeCoの一時金を受け取る際の調整規定の期間が見直されました。

具体的には、「前年以前4年以内」とされていた期間が「前年以前9年以内」に改正され、適用されるのは2026年1月1日以後に受け取る確定拠出年金の老齢一時金からで、2025年12月までに受け取り済みの一時金は従来どおりの判定となります。

一般的に「5年ルール」から「10年ルール」への変更と呼ばれることが多く、説明の方向によっては揺れがあり、受け取る順序と間隔を決める際は、国税庁の資料や税理士に確認したほうがいいでしょう。

2026年12月改正で考え方がどう変わるか

2026年12月1日に、iDeCoの掛金上限と加入年齢が見直されます。

  • 掛金上限:企業年金がない会社員は月2.3万円から最大月6.2万円に、自営業者などは国民年金基金等との合計で月6.8万円から7.5万円に引き上げられます。専業主婦(夫)など第3号被保険者は月2.3万円のままです。
  • 加入年齢:一定の要件を満たす人は、60歳以降も70歳未満まで拠出できます。
  • 適用時期:2026年12月分から新上限が適用され、通常の口座振替は2027年1月26日です。

この改正によって「ちょうど控除枠に収まる」という考え方は成り立たなくなる人も出てきます。

  • 月6.2万円を20年続けると、元本だけで約1,488万円になり、控除800万円を大きく超え、超えた部分は、(受取額−控除)×1/2が課税対象です。
  • 70歳まで拠出して年数が20年を超えると、1年ごとに控除が70万円ずつ増えます。

「掛金を増やして所得控除を早く多く取る」のか、「年数を伸ばして出口の控除を厚くする」のかは、自分の税率と退職金の見込みで変わります。

7. 判断するときのチェックリスト

  1. 所得税率(今と60歳以降の見込み)
  2. 月額掛金と拠出年数(新上限を使うか)
  3. 会社の退職金・企業年金の有無と金額
  4. iDeCoと退職金の受取時期をずらせるか(iDeCoは受取開始を遅らせることもできます)
  5. 一時金・年金・併用のどれが有利か(公的年金等控除との合計で比べます)
  6. 運用結果の振れ幅(下振れで元本割れになっても、拠出中の節税分は残ります)

「20年・800万円」は、退職給付がない人が控除枠を使い切る目安として便利ですが、これが全員に当てはまるわけではありません。

節税額は所得税率で大きく変わり、拠出中の所得控除が主役になる人も多く、会社の退職金がある人は、受取時期の間隔が税額を左右してきます。

2026年12月の改正後は、掛金額と拠出年数の組み合わせを見直す価値がありますので、いまのうちから改正を確認し、見直す準備をしておきましょう。